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2026.08.11離日・売却

買取と仲介、手取りはいくら違うのか?——引かれるものを全部並べる

浦松 丈二

浦松 丈二

四葉不動産株式会社代表取締役・宅建士・行政書士

プロフィール(士業ドットコム)↗

買取と仲介は、表面の価格ではなく手取りで比べることになります。仲介では媒介報酬が発生し、買主が見つかるまでの間は管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税といった保有のコストが出続けます。買取には契約不適合責任を免責にできるという別の価値がありますが、免責の特約をしても、民法第572条により、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができません。この記事では、媒介報酬の上限を定めた国土交通省の告示、800万円以下の物件の特例、保有コストの法令上の根拠、そして売却後の責任について、条文と告示に沿って費目を並べます。どちらが得かという結論は書きません。ご自身の数字で計算していただくための記事です。四葉不動産株式会社は文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。

表面の価格ではなく、手取りで比べてください。仲介には手数料と、売れるまでの保有コストと、値下げの可能性があります。買取には契約不適合責任を免責にできるという別の価値がありますが、知りながら告げなかった事実は免れません。

買取の価格が相場より低くなる理由は特集:日本を離れる方の不動産売却にあります。この記事はその先、価格から引かれるものを全部並べる記事です。得か損かの結論は書きません。

買取と仲介は、何が違うのですか?

引かれるものが違います。仲介は買主が第三者(多くは個人)で、媒介報酬が発生し、買主が現れるまで価格が確定しません。買取は買主が宅地建物取引業者で、価格が先に提示され、契約不適合責任を免責とする特約を置けます(ただし民法第572条の限界があります)。当社が直接買い取る場合は媒介ではないため媒介報酬は発生しませんが、他社の買取に媒介として入る場合は発生します。どちらの形かを契約前に確認してください。

仲介手数料は、いくらまで取れるのですか?

上限を国が告示で決めています。

宅地建物取引業法第46条は、報酬の額を国土交通大臣の定めるところによるとし、その額をこえて受けてはならないとし、告示しなければならず、事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示しなければならないとしています(第1項〜第4項)。

その告示が「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」です(告示番号・最終改正・施行日は末尾の根拠表)。売買・交換の媒介は第二が定めます。依頼者の一方につき、代金の額を区分して割合を乗じ、合計した金額以内です。

代金の額の区分乗じる割合
200万円以下の金額100分の5.5
200万円を超え400万円以下の金額100分の4.4
400万円を超える金額100分の3.3

これらの割合は消費税等相当額を含む数値です。

**「3%+6万円+消費税」という式は、告示に書かれていません。**告示が定めるのは上の区分計算だけです。400万円を超える場合にこれを整理すると「代金額×3%+6万円」に消費税を加えた額と一致します。導出結果であって、条文の文言ではありません。

代理は告示第三により、第二で算出した金額の二倍以内です。告示第十一①により、これらの規定によるほか報酬は受けられません。例外は依頼者の依頼によって行う広告の料金だけです。

800万円以下の物件は、手数料が高くなるのですか?

高くなることがあります。ただし上限は33万円です。

告示第七(低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例)は、代金の額が800万円以下の宅地又は建物を「低廉な空家等」とし、当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができるとしています。ただし三十万円の一・一倍が上限です。

区分上限
低廉な空家等の媒介(告示第七)33万円
低廉な空家等の代理(告示第八)66万円

落とし穴があります。代金がちょうど800万円のとき、原則の計算でも33万円です(800万円×3%+6万円=30万円、これに消費税等相当額を加えて33万円)。特例が意味を持つのは800万円未満の場合だけです。

「空家等」という名前ですが、通達「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和6年7月1日改正)は、価格800万円以下の宅地・建物について「使用の状態は不問」としています。空き家でなくても対象です。同通達は、契約の締結に際しあらかじめ上限の範囲内で報酬額を説明し合意する必要があると求めています。あとから請求するものではありません。

売れるまでの間、何が出ていくのですか?

仲介では、買主が見つかるまでの間、保有のコストが出続けます。

費目法令上の根拠
管理費・修繕積立金(区分所有)建物の区分所有等に関する法律第19条
固定資産税地方税法第350条第1項(標準税率は百分の一・四)
都市計画税地方税法第702条の4(百分の〇・三を超えられない)

この2つの税は法的な性質が違います。固定資産税の1.4%は標準税率で、条例でこれと異なる税率を定めることもありえます。都市計画税の0.3%は制限税率、つまり上限です。23区の実際の税率は1.4%と0.3%です。

住宅用地には課税標準の特例があり、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分)は固定資産税が価格×1/6、都市計画税が価格×1/3です。23区ではその都市計画税をさらに税額の2分の1軽減しています(令和8年度も継続)。

固定資産税・都市計画税を日割り等で精算する商慣習がありますが、東京都主税局は「地方税法上で規定されているものではありません」「あくまで当事者間の合意により行われるもの」としています。法律上当然の権利ではありません。

なお**「修繕積立税」という税目はありません。「修繕積立金」です。**このほか、水道光熱の基本料、火災保険料、町会費、住宅ローンの金利、除草・通風・通水などが一般に発生します。法令上の根拠はありません。

買取は、売ったあとの責任がなくなるのですか?

なくなりません。ここがこの記事の核心です。引き渡したものが契約の内容に適合しない場合、買主は、追完の請求(修補・代替物や不足分の引渡し。民法第562条第1項)、代金の減額請求(民法第563条第1項・第2項。原則は催告が必要で、追完不能等の4つの場合は不要)、損害賠償の請求と契約の解除(民法第564条)ができます。

期間の制限は民法第566条です。種類又は品質の不適合について、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、請求等ができなくなります。**「1年以内に通知」であって「1年以内に請求」ではありません。**ただし売主が引渡しの時に不適合を知り、又は重大な過失で知らなかったときは適用されません。

次に宅地建物取引業法第40条です。同条第1項は「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において」と書き出しています。民法第566条の期間を引渡しの日から二年以上とする特約を除き、同条より買主に不利な特約は許されず、反する特約は無効です(第2項)。

場面売主買主第40条
業者から個人が買う業者個人適用される
仲介で個人が個人に売る個人個人適用されない
買取(個人が業者に売る)個人業者適用されない
業者どうし業者業者適用されない(第78条第2項)

買取は売主が個人、買主が業者です。第40条は「自ら売主となる」業者の規定ですから、買取には働きません。免責の特約も置けます。

**ただし、民法第572条があります。**同条は、担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができないと定めています。

免責の特約は「知らなかったこと」には効きますが、「知っていて言わなかったこと」には効きません。雨漏り、傾き、シロアリ、給排水の不具合、近隣とのもめごと——知っていることは告知書に全部書いてください。書いたうえでの免責は効き、隠せば効きません。

では、手取りはどう計算すればいいのですか?

提示された価格から、引かれるものを順に引きます。

引かれるもの仲介買取根拠
媒介報酬告示の上限内で発生直接買取なら発生しない告示第二・第七
依頼にもとづく広告の料金依頼した場合のみ告示第十一①
管理費・修繕積立金売れるまで出続ける期間が短い分だけ小さい区分所有法第19条
固定資産税・都市計画税同上同上地方税法第350条第1項ほか
価格が下がる可能性ある先に提示された価格
売却後の責任特約による免責の特約が可能民法第572条

このほか、収入印紙、登記費用と司法書士の報酬、抵当権の抹消、残置物の処分などが一般に発生します。

計算例を1つだけ挙げます。あくまで費目の構造を示すための例です。

代金3,000万円の媒介報酬の上限金額
200万円以下の部分(5.5%)11万円
200万円超400万円以下(4.4%)8万8,000円
400万円超の2,600万円(3.3%)85万8,000円
合計(消費税等相当額を含む)105万6,000円

「3,000万円×3%+6万円=96万円、これに消費税等相当額を加えて105万6,000円」と一致します。

税の計算と申告は税理士、登記の申請は司法書士の業務です。おつなぎしますが、ご本人と直接ご契約いただきます。当社が紹介料を受け取ることはありません。

出国の期限があると、何が変わるのですか?

期間の不確実性そのものが、コストとして効いてきます。

仲介では買主が見つかるまで、保有のコストが出続けます。期間は物件と価格と時期で変わります。出国の日が決まっていると、「いつ売れるか分からない」ことを誰が引き受けるのかという問題になります。

引渡しの日は税務上の扱いにも関わります。非居住者の判定は引渡しの日出国後に売る・今やることをご覧ください。

どちらを選べばいいのですか?

結論は出しません。判断の軸を並べます。

問い買取に傾く材料仲介に傾く材料
引渡しの期限動かせない動かせる
価格の不確実性引き受けたくない引き受けられる
売却後の責任免責の特約を置きたい一般の枠組みでよい
保有コスト重い軽い
内覧への対応できないできる

提示額の読み方と相手方の確かめ方は、下の関連リンクにあります。

この記事は一般的な情報提供です。契約書の条項や物件の事情で結論は変わります。個別の判断は、書類を確認したうえで有資格者が行います。

この記事の根拠

法令・告示条・項内容施行日・最終改正
宅地建物取引業法第46条第1項〜第4項/第40条第1項・第2項/第78条第2項報酬の額の制限・告示・掲示/自ら売主となる業者の特約の制限(反する特約は無効)/業者相互間の適用除外2026年4月1日施行(最終改正 令和7年法律第68号)
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(告示)第二・第三・第七・第八・第十一①媒介・代理の報酬、低廉な空家等の特例、広告の料金昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号/最終改正 令和六年六月二十一日国土交通省告示第九百四十九号/令和六年七月一日施行
宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(通達)事前の説明と合意/使用の状態は不問令和6年7月1日改正
民法第562条第1項・第563条第1項第2項・第564条追完請求・代金減額・賠償と解除2026年6月24日施行(最終改正 令和8年法律第45号)
民法第566条・第572条1年以内の通知/免責特約でも知りながら告げなかった事実は免れない2026年6月24日施行(最終改正 令和8年法律第45号)
建物の区分所有等に関する法律第19条共用部分の負担2026年4月1日施行(最終改正 令和7年法律第47号)
地方税法第350条第1項・第702条の4固定資産税の標準税率/都市計画税の制限税率2026年7月31日施行(最終改正 令和8年法律第2号)
東京都主税局23区の税率、小規模住宅用地の軽減、精算は当事者間の合意令和8年度も継続

各法令の施行日・最終改正は公開前に確認して埋めます。

関連リンク

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この記事は、四葉不動産株式会社代表取締役・宅地建物取引士・行政書士の浦松丈二が書いています。毎日新聞で記者歴34年、中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。

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