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2026.08.11離日・売却

税務署に納税管理人を届け出れば、住民税も大丈夫なのか? —— 地方税は別の窓口です

浦松 丈二

浦松 丈二

四葉不動産株式会社代表取締役・宅建士・行政書士

プロフィール(士業ドットコム)↗

税務署に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を出しても、住民税や固定資産税の手当てにはなりません。地方税は地方税法に基づく別の手続きで、東京23区ではさらに窓口が分かれます。特別区民税・都民税は区に、固定資産税・都市計画税は東京都に、それぞれ納税管理人を申告します。23区の固定資産税が都税だからです(地方税法第734条第1項、第736条第1項)。住民税は1月1日に住所がある人に課され(同法第294条第1項第1号、第318条)、1月2日以降の出国でもその年度分は課税されます。東京都都税条例第125条は、申告を「定める必要が生じた日から10日以内」と定め、都の区域外の方を選ぶときは10日前までの承認申請を求めています。届出先は最低3か所です。文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。

大丈夫ではありません。税務署への届出は国税(所得税・消費税)だけです。地方税は別で、東京23区では住民税は区に、固定資産税は東京都に、それぞれ申告します。届出先は最低3か所になります。

このページは、すでに国税の納税管理人の届出をご存じの方に向けて、地方税の側で何が抜けるのかを書いています。国税の納税管理人そのものについては納税管理人は誰がなれるかを、出国後に未納が残ったときに何が起きるかは出国後の未納・加算税・在留審査をご覧ください。

最終更新:2026年8月11日

税務署に出した届出は、住民税にも効くのですか?

効きません。

税務署に出す「所得税・消費税の納税管理人の届出書」は、国税の手続きです。住民税・固定資産税は地方税で、地方税法という別の法律に基づき、別の窓口に申告します。

地方税法は、市町村民税について第300条第1項で「市町村内に住所等を有しない場合は、納税管理人を定めて市町村長に申告する」と定めています。固定資産税についても、第355条第1項・第2項が同じ構造の規定を置いています。国税の届出を何通出しても、この申告をしたことにはなりません。

東京23区で不動産をお持ちの方が出国する場合、届出先は最低3か所になります。

#税目届出先様式
1所得税・消費税税務署所得税・消費税の納税管理人の届出書(国税)
2特別区民税・都民税文京区長(区の税務課)納税管理人申告(承認・認定申請)書
3固定資産税・都市計画税東京都知事(文京都税事務所)納税管理人申告書(第25号様式)

文京区の物件の例です。他区なら、その区と、その区を管轄する都税事務所になります。

都民税の分を別に出す必要はありません。地方税法第28条第1項が、市町村民税の納税管理人は「当該納税義務者に係る個人の道府県民税の納税管理人として、納税に関する一切の事項を処理しなければならない」と定めているためです。23区ではこの規定が第734条第3項の読み替えを通じて働きます。**条文の構造としては、区への1件で都民税も兼ねると読めます。ただし、これをはっきり書いている自治体の案内は見つけられませんでした。**提出のときに区の窓口でご確認ください。

東京23区は、なぜ2か所に出すことになるのですか?

固定資産税が、区の税ではなく都の税だからです。

地方税法第1条第2項は、「この法律中道府県に関する規定は都に、市町村に関する規定は特別区に準用する」と定めています。原則はこれで、市町村の税は特別区の税になります。ところが23区には例外が置かれています。

条文内容
第734条第1項都は特別区の存する区域において、第1条第2項にかかわらず固定資産税(第5条第2項第2号)等を課する。「都を市とみなして第三章第二節…の規定を準用する」
第736条第1項特別区の税目から固定資産税が消える読み替え。特別区は特別区民税を課し、第三章第一節を準用する
第734条第2項第1号・第3項都は特別区の区域内で都民税を課する。第2章第1節第1款等を準用し、「市町村」を「特別区」等と読み替える

結果として、23区では固定資産税・都市計画税を東京都が課し、特別区民税・都民税を区が課します。窓口が2つに割れるのはこのためです。都市計画税は固定資産税の納税管理人が兼ねますので(第702条の5)、都税事務所には1件で足ります。

**23区の外では、こうはなりません。**東京都下の市町村でも、他県でも、固定資産税は市町村の税ですから、住民税と固定資産税の届出先は同じ市町村になります。「東京の物件だから東京都に出せばいい」と考えると、区への申告が抜けます。

出国の年の住民税は、どうなるのですか?

1月1日に日本に住所があれば、その年度分は課税されます。

地方税法第294条第1項第1号は、市町村民税を「市町村内に住所を有する個人」に課すると定めています。そして、課税されるかどうかを判定する日——賦課期日——は、第318条が「当該年度の初日の属する年の一月一日」と定めています。道府県民税も同じ構造で、納税義務は第24条第1項第1号、賦課期日は第39条です。

出国の時期その年度(6月から始まります)の住民税
1月1日より前に出国し、住所がなくなっていた課税されません
1月2日以降に出国した1月1日時点で住所があるため、課税されます

ここが誤解の多いところです。**出国した翌月から止まる、という税ではありません。**1月2日に日本を出ても、その年の6月に納税通知書が届き、通常は年4回の納期で納めます(普通徴収。第319条第1項)。文京区も「1月2日以降に国外転出する場合は、事前に納税管理人の申告(申請)が必要です」と案内しています。

固定資産税も同じで、賦課期日は1月1日です(第359条)。1月1日時点の所有者——登記簿等に登記・登録されている者——に課されます(第343条第1項・第2項)。年の途中で売っても、その年度分の納税義務者は1月1日の所有者のままです。売主と買主の日割り精算は当事者間の約束であって、都や区に対する納税義務者が入れ替わるわけではありません。

住民票を抜けば、住民税はかからないのですか?

そう言い切ることはできません。

地方税法第294条第2項は、「市町村内に住所を有する個人」とは、住民基本台帳法の適用を受ける者については「当該市町村の住民基本台帳に記録されている者」をいう、と定めています。ここだけを読むと、住民票を抜けば対象から外れるように見えます。

しかし同条第3項は、住民基本台帳に記録されていない個人であっても、市町村内に住所を有する場合には、記録されている者とみなして課税することができる旨を定めています。記録の有無は入口の基準であって、最後の決め手ではありません。生活の本拠が実際にどこにあるかで判断される余地が残ります。

さらに第294条第1項第2号は、「市町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で当該市町村内に住所を有しない者」に、均等割のみを課すると定めています。国内に家屋敷を残して出国する場合に関係しうる規定です。**ただし、国外にお住まいの方にこれがどのように運用されているかは、自治体が明示した資料を確認できていません。**該当しそうな場合は、物件の所在する区市町村にご確認ください。

住民票の異動は住民基本台帳の手続きであって、税の手続きとは別です。東京都主税局も、次のように明記しています。

区役所等で住民票の変更手続を行っても、23区内の固定資産税・都市計画税の納税通知書(土地・家屋)の送付先は変更されません。

転出届を出したから通知が追いかけてくる、という仕組みにはなっていません。

会社を辞めて出国する場合、住民税はいつ引かれるのですか?

辞める時期によって変わります。

給与から住民税が天引きされている方(特別徴収)が退職する場合、残っている税額の扱いは地方税法第321条の5第2項ただし書が定めています。

退職等の時期残額の一括徴収
6月1日〜12月31日本人の申出があった場合に限り、一括徴収
翌年1月1日〜4月30日申出がなくても、5月31日までに支払われる給与・退職手当等から一括徴収(月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるときに限ります)

徴収した分の納入期限は、徴収した月の翌月10日までです。

文京区も、事業主向けの案内で次のように示しています。

(2)翌年1月から4月までに退職等をした場合:納税義務者からの申し出がない場合でも、5月31日までに支払われる給与等から、一括徴収してください。

そして同じ案内に、「従業員が日本から出国する場合は、納税管理人選任の届を提出するようお伝えください。」とあります。

つまり、1〜4月に退職して出国する方は最後の給与や退職手当からまとめて引かれる可能性が高く、6〜12月に退職する方は自分から申し出ないと残額が普通徴収に回ります。**普通徴収に回った分は、ご本人宛の納税通知書として届きます。**日本を出たあとにそれを受け取る人が、納税管理人です。

固定資産税は、いつまでに届け出るのですか?

東京都の場合、条例に「10日」という期限があります。

法律(地方税法第355条)には具体的な日数の定めがありません。期限を置いているのは条例のほうです。

場合期限根拠
納税管理人を定めたこれを定める必要が生じた日から10日以内に、納税管理人申告書を知事に提出する東京都都税条例第125条第1項
都の区域外に住む人を納税管理人にするこれを定める必要が生じる日の10日前までに、知事に申請して承認を受ける東京都都税条例第125条第3項

**区域外の方に頼む場合は、事前の申請と承認が要ります。**出国が決まってから動き出すと間に合わないことがあります。ここが実務の山場です。

もうひとつ、別の締切があります。東京都主税局は次のように案内しています。

毎年6月にお送りする納税通知書の送付先を変更するには、3月末までのお手続が必要です。

条例の「10日以内」とは別に、その年の通知書に間に合わせたいなら3月末という目安がある、ということです。

提出先と様式をまとめます。

主体様式提出先
文京区(特別区民税・都民税)PDFの表題は「納税管理人申告(承認・認定申請)書」(第5号様式)。区のサイト上は「納税管理人(申告・承認申請・認定申請)書」などと表記のゆれがあります文京区 総務部 税務課 課税第一係/課税第二係(文京シビックセンター10階南側)
東京都主税局(固定資産税・都市計画税)「納税管理人申告書」(第25号様式)土地・家屋の所在する区の都税事務所(文京区の物件なら文京都税事務所・文京シビックセンター内)

主税局の案内は日本語・英語・中国語・韓国語で出ており、国外にお住まいの方向けのページもあります。

届け出ないと、何が起きるのですか?

書類が届かないまま、納期限が過ぎていきます。

地方税法第20条第1項は、書類は送達を受けるべき者の住所等に送達すると定め、そのただし書で、「納税管理人があるときは、地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く)又は還付に関する書類については、その住所、居所、事務所又は事業所に送達する」としています。納税管理人がいれば納税通知書はその人に届き、いなければご本人の住所に送られます。転出したあとの日本の住所に送られても、受け取る人がいません。

さらに第20条第4項は、通常の取扱いによる郵便で発送した場合、「通常到達すべきであつた時に送達があつたものと推定する」と定めています。受け取っていなくても、送達があったものと推定される——つまり納期限は進みます。「推定」ですから覆る余地が絶対にないとまでは言えませんが、届かなかったから納期限が延びる、という仕組みではないとお考えください。

納期限を過ぎると延滞金がつきます。

内容根拠
市町村民税の延滞金:年14.6%(納期限の翌日から1月を経過する日までは年7.3%第326条第1項
固定資産税の延滞金:同じ構造第369条第1項
やむを得ない理由があると認める場合、延滞金を減免することができる第326条第4項/第369条第2項

**この年14.6%・年7.3%は法律上の本則です。**実際の適用率は特例により引き下げられている場合があり、当該年度に何%が適用されるかは本記事では確認していません。金額は区・都税事務所の通知でご確認ください。減免の規定もあり、延滞金が一律にかかると言い切ることもできません。

過料・罰金の定めもあります。ここは条文の作りに注意が必要です。

内容根拠注意
正当な事由なく申告をしなかった場合、条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる市町村民税=第302条/固定資産税=第357条これは条例への授権です。法律が直接に過料を科すのではありません
虚偽の申告等をしたときは30万円以下の罰金第301条第1項/第356条第1項

東京都は、この授権を受けて条例で実装済みです。東京都都税条例第126条第1項は「正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、十万円以下の過料を科する」と定め、同条第2項で「前項の過料の額は、知事が定める」としています。**一方、文京区の条例に過料の規定があるか、あるとして条番号が何かは確認できていません。**区の例規集をご確認ください。

誰を納税管理人にすればいいのですか?

日本国内で書類を受け取り、期限までに納付できる人です。

地方税法第300条第1項は、市町村内に住所等を有しない場合に納税管理人を定めて市町村長に申告することとし、区域外の方を選ぶ場合は申請して承認を受けることとしています。固定資産税も同じ構造です(第355条第1項・第2項)。

なお、徴収の確保に支障がないことについて申請して認定を受けたときは、納税管理人を定めなくてもよいという規定もあります(第300条第2項、第355条第2項)。文京区の様式が「納税管理人申告(承認・認定申請)書」と1枚にまとまっているのは、この申告・承認・認定の3つを扱うためです。

候補ごとの考えどころを並べます。

候補考えどころ
日本に残るご家族・ご親族費用はかかりませんが、納期ごとに納付し、通知を確認し続ける負担が数年続きます
ご友人・知人上に加えて、税の書類を預ける関係かどうか
税理士費用がかかります。申告と納付をまとめて任せられます

**四葉不動産株式会社は、納税管理人をお引き受けしていません。**地方税法第28条第1項も書いているとおり、納税管理人は「納税に関する一切の事項を処理しなければならない」立場です。その一部だけをつまんで処理する役目ではありません。当社が中途半端に引き受けるべきものではないと考えています。

ご相談いただければ、**税理士におつなぎします(ご本人と直接ご契約いただきます)。当社が紹介料を受け取ることはありません。**登記は司法書士、税務は税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。どなたに頼むのが適切かは、お持ちの資産と滞在期間によりますので、個別の判断は税理士にご確認ください。

この記事の根拠

内容根拠
市町村民税の納税管理人(市町村長への申告、区域外の者は承認)/定めなくてよい認定地方税法(昭和25年法律第226号)第300条第1項・第2項
固定資産税の納税管理人(同じ構造)同法第355条第1項・第2項
個人の道府県民税の納税管理人は、市町村民税の納税管理人が兼ねる同法第28条第1項
都市計画税の納税管理人は、固定資産税の納税管理人が兼ねる同法第702条の5
都・特別区への準用の原則同法第1条第2項
23区の固定資産税は都税(都を市とみなす準用)同法第734条第1項
都は特別区の区域内で都民税を課する/読み替え同法第734条第2項第1号・第3項
特別区の税目からの固定資産税の除外、特別区民税同法第736条第1項・第3項
市町村民税の納税義務者(住所を有する個人)/事務所・事業所・家屋敷に対する均等割同法第294条第1項第1号・第2号
住所を有する個人=住民基本台帳に記録されている者/記録されていない者を記録されている者とみなす課税同法第294条第2項・第3項
個人の市町村民税の賦課期日(1月1日)同法第318条
道府県民税の納税義務者・賦課期日同法第24条第1項第1号/第39条
固定資産税の賦課期日(1月1日)/所有者(登記簿等に登記・登録されている者)に課する同法第359条/第343条第1項・第2項
普通徴収(納税通知書の交付)同法第319条第1項/第364条第1項
退職等の場合の一括徴収同法第321条の5第2項ただし書
書類の送達先(納税管理人があるとき)/郵便による送達の推定同法第20条第1項本文・ただし書/第20条第4項
延滞金(年14.6%/年7.3%)とその減免同法第326条第1項・第4項/第369条第1項・第2項
申告をしなかった場合の過料(条例への授権)同法第302条/第357条
虚偽の申告等に対する罰金(30万円以下)同法第301条第1項/第356条第1項
固定資産税の納税管理人の申告期限(10日以内/10日前までの承認申請)/過料(10万円以下、額は知事が定める)東京都都税条例第125条第1項・第3項/第126条第1項・第2項
納税通知書の送付先は住民票の変更では変わらない/3月末までの手続東京都主税局の案内
1月2日以降に国外転出する場合は事前の納税管理人の申告(申請)が必要文京区の案内
1〜4月の退職等は申し出がなくても一括徴収/出国する従業員への案内文京区「特別徴収義務者の方へ」

条文は2026年8月11日時点で確認したものです。**次の点は確認できていません。**①文京区の条例の条文本文と、過料の規定の有無・条番号 ②個人の都民税が区への1件で足りることを自治体が明示した記述 ③当該年度に実際に適用される延滞金の率 ④家屋敷等に対する均等割が国外にお住まいの方にどう運用されているか。いずれも、区・都税事務所にご確認ください。

本ページは一般的な情報提供です。個別の税額や課税の当否についての判断は行っていません。**税務は税理士におつなぎします(ご本人と直接ご契約いただきます)。当社が紹介料を受け取ることはありません。**不動産の媒介は四葉不動産株式会社が、書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ別の契約としてお受けします。

この記事は、四葉不動産株式会社代表取締役・宅地建物取引士・行政書士の浦松丈二が書いています。毎日新聞で記者歴34年、中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。

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