決済の当日、実際には何が起きているのか?——誰が何を確認しているか
決済の当日は、関係者が一室に集まり、司法書士が本人確認と書類の確認を終えて「このまま登記を申請できる」と判断してから、はじめてお金が動きます。順番が逆になることはありません。最初に行われるのは司法書士の本人確認です。日本司法書士会連合会の会規である司法書士行為規範第44条が本人と意思と目的物の確認を求め、第47条は不動産取引の立会いを補助者に行わせてはならないと定めています。着金を確認したあと、その日のうちに登記を申請します。不動産登記法第4条が登記の順位は登記の前後によると定め、第19条が受付番号を付すと定め、不動産登記規則第58条が受付番号の順序に従って登記すると定めているからです。海外から臨む場合の書類も表にまとめました。文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。
決済の日は、関係者が一室に集まり、司法書士が書類を全部見て「これで登記できる」と判断してから、はじめてお金が動きます。順番が逆になることはありません。着金を確認し、その日のうちに登記を申請して終わります。
「当日、自分は何をすればいいのか」とよく聞かれます。することは署名と押印、鍵と書類の受け渡しだけ。時間の大半は司法書士が確認している時間で、この記事はその中身を書きます。流れは日本を離れる方の不動産売却にあります。
最終更新:2026年8月11日
決済の日、誰が集まるのですか?
**売主、買主、双方の不動産業者、司法書士です。**買主が融資を受ける場合は金融機関の担当者が加わり、その金融機関で行うのが一般的とされます。売主と買主は本人確認を受け、売主は署名・押印と引き渡し、買主は支払い。不動産業者は書類と精算金の確認と鍵の引き継ぎ、司法書士は本人・意思・目的物の確認と登記申請です。
**その場にいる司法書士は、司法書士本人です。**日本司法書士会連合会の会規である司法書士行為規範第47条は「司法書士は、不動産取引における立会を、補助者に行わせてはならない」と定めます(令和5年4月1日施行)。
最初に何をするのですか?
**司法書士による本人確認です。**お金の話より先です。司法書士行為規範第44条はこう定めています。
司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、依頼者及びその代理人等が本人であること及びその意思の確認並びに目的物の確認等を通じて、実体上の権利関係を的確に把握しなければならない。
同条第2項は、確認した旨の記録の作成と保管まで求めています。ここは正確に書きます。司法書士法と同法施行規則に「本人確認義務」という条文はありません。根拠はこの会規(ほかに司法書士法第2条の職責)と、犯罪による収益の移転防止に関する法律です。同法第2条第2項第46号は司法書士を、第42号は宅地建物取引業者を特定事業者とし、第4条第1項の取引時確認では本人特定事項/取引を行う目的/職業(法人は事業内容)/実質的支配者を確認します。
**司法書士と不動産業者が、それぞれ別に確認をします。**同じことを二度聞かれるのはこのためです。
司法書士は、何を見て「登記できる」と判断するのですか?
書類と、目の前の人と、登記簿の3つが一致しているかどうかです。
不動産登記法第60条は、権利に関する登記の申請は「登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない」と定めています。両方の書類がそろわないと進みません。
| 確認するもの | よくあるつまずき |
|---|---|
| 本人確認書類・印鑑証明書・委任状 | 期限切れ、作成からの期間、記載の不足、押印した印鑑の相違 |
| 登記識別情報(権利証) | 見つからない。不動産登記規則第72条第1項第1号により、司法書士が「面談した日時、場所及びその状況」を記載した本人確認情報を作るため面談が要る |
| 登記簿の住所・氏名と現在のもの、物件の表示 | 一致しない。住所変更の登記が別に要る/登記簿と契約書の食い違い |
住所が古いときは登記簿の住所変更が義務化、委任状は委任状に何をどう書くかへ。
お金が動くのは、どの時点ですか?
**司法書士が「登記できる」と言ったあとです。**民法第533条は、双務契約の当事者の一方は「相手方がその債務の履行…を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる」と定めています(同時履行の抗弁)。売主の引渡し・移転登記の義務と買主の代金支払いの義務が向かい合うため、同じ部屋で同時に行います。
| 順 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1 | 司法書士が本人確認と書類の確認を行う |
| 2 | 司法書士が「このまま登記を申請できる」と判断する |
| 3 | 買主が代金を振り込む(融資がある場合は実行される) |
| 4 | 着金を確認する |
| 5 | 諸費用と精算金を清算し、鍵と関係書類を引き渡す |
| 6 | 司法書士が法務局へ登記を申請する |
**2と3が入れ替わることはありません。**なお所要時間は一般に1時間から2時間程度とされますが、法令にも官庁の資料にも根拠のない目安です。
なぜ「その日のうちに」登記を申請するのですか?
登記の順位が、申請の前後で決まるからです。条文は3段でつながります。不動産登記法第4条は「同一の不動産について登記した権利の順位は、…登記の前後による」と定めます。その前後は、同法第19条により受付のときに付される受付番号で決まり(2以上の申請の前後が明らかでないときは同時とみなす)、不動産登記規則第58条は「登記官は、…受付番号の順序に従って登記する」と定めています。だから一日でも早く受付番号をもらう意味があります。
ここからは運用の話です。
| 時間 | |
|---|---|
| 法務局の業務取扱時間 | 平日 午前8時30分〜午後5時15分 |
| 法務局の窓口対応時間 | 平日 午前9時〜午後5時(令和6年1月4日から) |
| オンライン申請システムの利用時間 | 平日 午前8時30分〜午後11時/休日 午前8時30分〜午後6時 |
| オンラインの登記申請の受付時間 | 平日 午前8時30分〜午後5時15分。以降と休日の送信は翌業務日の受付 |
**「利用時間」と「受付時間」は別です。**夜11時までつながっても、午後5時15分を過ぎた送信は翌業務日の受付です。決済が午前中に組まれるのは、ここから逆算するためです。ただし法務局は窓口について「窓口対応時間外は、窓口での申請等を一切受け付けないものではありません」と注記しています。
当日、いくら精算するのですか?
金額は物件と契約次第ですが、項目は決まっています。
| 精算する項目 | 向き |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税、管理費・修繕積立金 | 引渡日以降の分を、買主から売主へ |
| 賃料・敷金(賃貸中) | 契約の定めによる(根拠条文は未検証) |
**固定資産税の日割り精算は、法律で決まっているものではありません。**東京都主税局の説明です。
売買契約などで所有権移転する際に固定資産税を日割り等で精算を行う商慣習がありますが、地方税法上で規定されているものではありません。…あくまで当事者間の合意により行われるものです。
起算日を1月1日にするか4月1日にするかも契約書の定めです。当日ではなく契約の前にご確認ください。
海外にいたまま、決済に出られますか?
**ご事情によって変わります。**まず、**権利証がある通常の決済で、売主が司法書士と対面しなければならないと定めた法令の規定は見当たりません。**ただし行為規範第44条は本人と意思の確認を求め、確認の方法は司法書士の判断です。
いっぽう権利証がない場合は別で、不動産登記規則第72条第1項第1号が「面談した日時、場所及びその状況」の記載を求めるため、面談が要ります。委任状に付ける書類は次のとおりです。印鑑証明書によらない場合は、公証人またはこれに準ずる者の認証が例外です(不動産登記令第18条第1項〜第3項/不動産登記規則第49条第1項第1号・第2項第2号)。
| 状況 | 委任状に付けるもの |
|---|---|
| 日本に住民登録があり、印鑑登録をしている | 記名押印+印鑑証明書(作成後3か月以内) |
| 日本国籍で海外にお住まいの場合 | 在外公館の署名証明(外務省は「日本の印鑑証明に代わるもの」と説明)。**領事の面前で署名するため本人が公館へ出向く必要があり、代理・郵便申請はできません。**1通1,700円相当(在留証明1,200円) |
| 外国籍で海外にお住まいの場合 | 署名証明は申請できず、現地の公証人に依頼することになります |
**ここは未検証です。**在外公館の領事が不動産登記規則第49条の「公証人に準ずる者」に当たると明記した法令・通達は、本記事の調査では見つかりませんでした。実務ではそう扱われていますが断定はできません。管轄法務局と司法書士に事前にご確認ください。
重要事項説明は、宅地建物取引業法第35条第8項・第9項および第37条第4項・第5項により、承諾を得て電磁的方法で提供できます(令和4年5月18日施行)。IT重説は令和3年3月30日から本格運用です。全体像は海外所有者の売却ガイドに。
何が起きると、当日に決済できなくなるのですか?
多くは書類の一致で止まります。
| 止まる原因 | いつ気づけるか |
|---|---|
| 登記簿の住所・氏名が現在のものと違う | 登記事項証明書を見た時点 |
| 権利証が見つからない | 書類を集める時点。面談の日程が要る |
| 印鑑証明書が古い、委任状の記載や押印が合わない | 書類をそろえる時点。当日は直せない場合がある |
| 抵当権の抹消書類が届かない/融資が実行されない/着金が確認できない | 事前の段取りと当日 |
事故の多くは、事前に見つかるはずのものを見落として当日を迎える形です。
この記事の根拠
| 法令・資料 | 条・項・号 | 施行日・最終改正 |
|---|---|---|
| 司法書士行為規範(日本司法書士会連合会の会規) | 第44条/第47条 | 令和5年4月1日施行 |
| 司法書士法 | 第2条(職責)。※同法・同施行規則に「本人確認義務」の明文規定なし | 2026年5月21日施行(最終改正 令和5年法律第63号) |
| 犯罪による収益の移転防止に関する法律 | 第2条第2項第46号・第42号/第4条第1項 | 2026年7月23日施行(最終改正 令和8年法律第64号) |
| 不動産登記法 | 第4条/第19条/第60条 | 2026年6月24日施行(最終改正 令和8年法律第46号) |
| 不動産登記規則 | 第49条第1項第1号・第2項第2号/第58条/第72条第1項第1号 | 2026年5月21日施行(最終改正 令和8年法務省令第38号) |
| 不動産登記令 | 第18条第1項・第2項・第3項 | 2026年5月21日施行(最終改正 令和8年政令第38号) |
| 民法 | 第533条(同時履行の抗弁) | 2026年6月24日施行(最終改正 令和8年法律第45号) |
| 宅地建物取引業法 | 第35条第8項・第9項/第37条第4項・第5項 | 令和4年5月18日施行。売買のIT重説は令和3年3月30日から本格運用 |
| 外務省「在外公館における証明」 | 署名証明・在留証明 | 令和8年7月9日更新 |
| 東京都主税局「固定資産税・都市計画税」 | 精算は地方税法の規定ではなく当事者間の合意 | ― |
| 法務局/登記・供託オンライン申請システム | 業務取扱時間・利用時間・受付時間 | 運用 |
「未検証」は2026年8月11日時点の条文により、施行日・最終改正日の裏取りができていません。**この記事は一般的な情報提供で、個別の可否を判断するものではありません。**登記は司法書士の業務です。必要な場面で司法書士におつなぎします(ご本人と直接ご契約いただきます)。当社が紹介料を受け取ることはありません。
関連リンク
この記事は、四葉不動産株式会社代表取締役・宅地建物取引士・行政書士の浦松丈二が書いています。毎日新聞で記者歴34年、中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。文京区小日向、茗荷谷駅から徒歩5分です。
