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2026.09.15相続

相続した工場・倉庫を売る、土壌汚染とアスベストは誰がどこまで調べる?

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した工場・倉庫・作業場だった不動産を売るとき、土壌汚染とアスベストは「誰がどこまで調べるか」で段取りが変わります。土壌汚染は有害物質使用特定施設の使用廃止時に土地所有者等へ調査・報告の義務が生じ(土壌汚染対策法第3条)、アスベストは石綿使用調査の記録があるときその内容が重要事項説明の対象になり(宅建業法第35条)、解体・改修では施工者に事前調査結果の報告義務があります(大気汚染防止法・令和4年4月1日〜)。調査は指定調査機関、相続登記は司法書士、譲渡所得税は税理士、紛争は弁護士へ振り分けます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が条文から整理します。

結論(先に要点):相続した工場・倉庫・作業場だった不動産を売るとき、土壌汚染とアスベストは「誰がどこまで調べるか」で段取りが変わります。①土壌汚染は、有害物質使用特定施設を使用廃止したときに土地所有者等へ調査・報告の義務が生じ(土壌汚染対策法第3条)、一定規模以上の土地の形質変更でも調査につながります(第4条)。②アスベストは、建物について石綿使用調査の結果が記録されているときはその内容が重要事項説明の対象になり(宅地建物取引業法第35条・施行規則第16条の4の3)、解体・改修工事では施工者に事前調査結果の報告義務があります(大気汚染防止法。令和4年4月1日から)。調査は環境省の指定調査機関、相続登記は司法書士、譲渡所得税は税理士、契約後の紛争は弁護士へ振り分けます。

親から工場・倉庫・作業場だった不動産を相続し、いざ売ろうとすると出てくるのが「土壌汚染やアスベストは大丈夫か」という不安です。住宅と違い、有害物質を扱っていた可能性がある土地・建物は、売る前に調べる項目が一段増えます。本記事は、相続した事業用不動産を売りたい相続人に向けて、不動産取引の視点から土壌汚染・アスベストがどう扱われるか、売主が負う告知の範囲はどこまでかを条文と公的資料から整理したものです。個別の汚染の有無の判定や測定は調査機関、税額は税理士へ振り分けます。

工場・倉庫跡地の売却で土壌汚染はいつ調査が要る?

土壌汚染の調査が法律上求められる主な場面は、土壌汚染対策法が定める次の2つです。

第一に、有害物質使用特定施設(特定有害物質を製造・使用・処理する一定の施設)の使用を廃止したときです。第3条は、その工場・事業場の敷地であった土地の所有者等に、土壌汚染の状態を指定調査機関に調査させ、結果を都道府県知事に報告する義務を課します(土地の利用方法からみて健康被害のおそれがない旨の知事の確認を受けたときは、その時点での調査が猶予されます)。

第二に、一定規模以上の土地の形質変更です。第4条は、3,000㎡以上(汚染のおそれがある場所では900㎡以上)の土地の形質を変更するときに届出を求め、知事が必要と認めれば調査を命じます。売却後に買主が建て替え・造成をする場合、この規模に当たれば調査につながります。

法律上の義務がない場合でも、実務では買主・金融機関が自主調査(土地の履歴を調べる地歴調査=フェーズ1、必要なら土壌の分析=フェーズ2)を求めることが多く、汚染の可能性がある工場・倉庫跡地では調査の有無が価格と成約を左右します。

場面根拠調査の要否
有害物質使用特定施設の使用廃止土壌汚染対策法第3条土地所有者等に調査・報告義務(確認で猶予あり)
3,000㎡以上(汚染のおそれ900㎡以上)の形質変更同第4条届出→知事が命じれば調査
買主・金融機関の求め契約・融資実務任意(地歴調査・土壌分析)

工場・倉庫跡地そのものの売り方は「営業倉庫にできる物件の条件」、解体して更地で売るか現況で売るかは「相続した空き家は解体して更地か古家付きか」に整理しています。

土壌汚染対策法3条の調査義務は誰にかかる?

第3条の調査義務がかかるのは、**その土地の所有者・管理者・占有者(土地所有者等)**です。施設を廃止した事業者ではなく、土地の所有者側に義務が向く点がポイントです。相続で工場・倉庫の敷地を引き継いだ相続人は、被相続人が有害物質使用特定施設を使用廃止していた経緯があると、この義務の当事者になり得ます。

実際に土壌を調べるのは、環境大臣・都道府県知事が指定する指定調査機関です。所有者が自分で測るのではなく、指定調査機関に調査させ、結果を知事に報告します。調査の結果、基準に適合しない区域は「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定され、指定を受けると土地の利用や形質変更に制限がかかります。この指定の有無は、売買のときに買主へ説明すべき法令上の制限に関わります。

論点内容
義務の主体土地所有者等(施設を廃止した事業者ではなく土地側)
調べる主体指定調査機関(環境大臣・知事が指定)
報告先都道府県知事
指定区域要措置区域/形質変更時要届出区域(利用・形質変更に制限)

相続した土地に第3条の経緯があるかは、被相続人の事業内容・施設の届出・使用廃止の記録をたどって確認します。調査が必要かどうか、区域指定の有無の判断は、指定調査機関と都道府県の窓口で確認するのが確実です。

アスベストの事前調査結果は重要事項説明にどう出る?

アスベスト(石綿)は、建物について不動産取引で扱われます。宅地建物取引業法第35条第1項と施行規則第16条の4の3は、重要事項説明の項目として、建物について石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容を説明すべきものと定めています。ここで注意したいのは、「調査の記録があるときはその内容を説明する」義務であって、売主・宅建業者に石綿調査そのものを新たに実施する義務まで課すものではない点です。同じ条文は、昭和56年6月1日より前に新築着手した建物が耐震診断を受けているときはその内容の説明も求めます。

一方、解体・改修工事の場面では別の制度が動きます。大気汚染防止法は、令和4年(2022年)4月1日から、一定規模以上の建築物等の解体・改修工事について、元請業者(または自主施工者)に石綿の有無の事前調査結果を都道府県等へ報告する義務を課しました(石綿事前調査結果報告システムで電子報告。労働基準監督署への報告も同時に行えます)。売却後に買主が解体する場合、この報告義務は工事の施工者側にかかります。

場面誰に内容
売買の重要事項説明宅建業者石綿使用調査の記録があるときはその内容(宅建業法第35条・規則第16条の4の3。新たな調査義務ではない)
解体・改修工事元請業者・自主施工者一定規模以上で事前調査結果を都道府県等・労基署へ報告(大気汚染防止法。令和4年4月1日〜)

なお、土壌汚染そのものは宅建業法第35条の法定説明項目に個別列挙されているわけではありませんが、売主・宅建業者が知っている事実は告知義務(宅建業法第47条)や売買後の契約不適合責任の対象になり得ます。知っている汚染・石綿の事実を隠して売ると、後から責任を問われるという点は、土壌汚染・アスベストに共通します。

調査費用と対策費は売却価格からどう差し引かれる?

土壌汚染やアスベストの可能性がある物件は、調査費・除去費・対策費が価格の交渉材料になります。実務では、次のいずれかで整理することが多く、どれを選ぶかで手取りが変わります。

  • 売主が調査・対策をしてから、きれいにして売る(費用は先に出るが売りやすい)
  • 現況のまま、調査・対策の費用相当を価格から差し引いて売る(買主負担を織り込む)
  • 契約不適合責任の範囲を特約で調整し、リスクの分担を決める

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

個人が売主の場合、契約不適合責任は特約で軽減・免責できます(ただし売主が知りながら告げなかった事実には免責が及びません)。売主が宅地建物取引業者で買主が個人の場合は、宅地建物取引業法第40条により通知期間を引渡しから2年以上とするなどの制限があります。知っている汚染・石綿の事実は告げたうえで、その分を価格・特約で調整するのが、後の紛争を避ける基本です。

売り方費用の出方向くケース
調査・対策後に売る先に売主負担早く安心して引き渡したい
現況渡し+価格調整買主負担を織り込む費用を先に出したくない
特約でリスク分担交渉次第汚染の程度が不確実

対策費の見積りは専門業者、税務上の取扱い(譲渡費用に含められるか等)は税理士の領域です。当社は売り方と価格の設計を、費用と税務の当てはめはそれぞれの専門家が見ます。

相続登記・調査・税務は誰にどう分けて頼む?

物件の売り方の見立てと売買の媒介は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。役割は次のように分かれます。

順番すること担い手
1相続登記(被相続人から相続人へ名義を移す)司法書士
2土壌汚染の地歴調査・土壌分析・区域指定の確認指定調査機関・都道府県
3石綿の調査・除去(解体・改修時の事前調査報告を含む)調査・解体業者
4売り方(現況/対策後)と価格の設計、媒介宅地建物取引業者(当社)
5譲渡所得税(取得費が不明なときの取扱いを含む)の計算税理士
6買主との契約不適合・汚染をめぐる紛争弁護士

相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、売る前提でも先に名義を整える必要があります。取得費が分からない古い工場・倉庫では、譲渡所得の計算が住宅より難しくなることがあり、取得費の扱いや相続税の取得費加算などは税理士の所管です。

土壌汚染状況調査は環境省の指定調査機関、相続登記は司法書士、譲渡所得税は税理士、買主との紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。 これらはそれぞれ独立した事業体であり、当社とは別々にご契約いただきます。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。相続不動産全般の進め方は相続・空き家の相談にまとめています。山林・原野など宅地でない相続不動産の売り方は「相続した山林・原野は売れるのか」もご覧ください。

よくある質問

Q. 相続した工場跡地は、売る前に必ず土壌汚染調査をしないといけませんか?
A. 必ずではありません。土壌汚染対策法第3条は、有害物質使用特定施設の使用を廃止したときに土地所有者等へ調査・報告を求めますが、これに当たらなければ法律上の義務はただちには生じません。ただし買主・金融機関が地歴調査や土壌分析を求めることが多く、汚染の可能性がある土地では調査の有無が価格と成約を左右します。区域指定の有無は指定調査機関と都道府県で確認してください。

Q. アスベストの調査は売主がやらないといけませんか?
A. 売買の重要事項説明で求められるのは「石綿使用調査の結果が記録されているときはその内容を説明する」ことで、宅建業法は売主に新たな石綿調査そのものを義務づけてはいません。一方、売却後に建物を解体・改修する場合は、一定規模以上で施工者(元請業者等)に事前調査結果の報告義務があります(大気汚染防止法。令和4年4月1日〜)。誰が調べるかは場面で変わります。

Q. 汚染やアスベストを知っていて黙って売ったらどうなりますか?
A. 売主が知りながら告げなかった事実には、契約不適合責任の免責特約が及びません。宅建業者には告知義務(宅建業法第47条)もあります。知っている事実は告げたうえで、調査・対策の費用相当を価格や特約で調整するのが、後の紛争を避ける基本です。契約後の紛争になった場合は弁護士の領域です。

Q. 取得費が分からない古い工場・倉庫は、譲渡所得の計算はどうなりますか?
A. 取得費が不明・不確実なときの取扱い(概算取得費や、相続税の取得費加算の特例など)は、税理士の所管です。調査費・対策費を譲渡費用に含められるかも含め、税額の計算と特例の適用可否は必ず税理士にご確認ください。当社は売り方と価格の設計を担います。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「土壌汚染対策法」(平成14年法律第53号。第3条=有害物質使用特定施設の使用廃止時の土地所有者等による調査・報告と知事の確認による猶予、第4条=一定規模(3,000㎡以上、汚染のおそれのある土地は900㎡以上)の土地の形質変更の届出と調査命令、要措置区域・形質変更時要届出区域の指定。2026年9月15日参照
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第35条第1項=重要事項の説明、第47条=重要な事項の告知義務、第40条=担保責任の特約の制限)/同法施行規則第16条の4の3(建物について石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときはその内容、耐震診断の内容が重要事項)。2026年9月15日参照
  • 環境省・厚生労働省「石綿事前調査結果報告システム」(大気汚染防止法に基づき、令和4年4月1日から一定規模以上の建築物等の解体・改修工事について、元請業者・自主施工者が石綿の事前調査結果を都道府県等・労働基準監督署へ電子報告する制度。2026年9月15日参照

※土壌汚染調査・区域指定の要否、アスベスト調査・報告の要否、契約不適合責任の免責特約の効き方は、物件ごと・当事者ごとに異なります。本記事は個別の物件について判断していません。土壌汚染は指定調査機関と都道府県、建築・解体は建築士・施工者、税額は税理士、紛争は弁護士の窓口で最終確認してください。
※取得費が不明な場合の譲渡所得の計算、相続税の取得費加算などは要件が細かく、適用可否は必ず税理士にご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の汚染の有無・売却価格・税額を判断・保証するものではありません。
※物件の見立て・価格設計・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が承ります。土壌汚染状況調査は指定調査機関、相続登記は司法書士、譲渡所得税は税理士、買主との紛争は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と手続(行政・相続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。

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