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相続

相続した一般定期借地権付きの建物やマンションは、どう売却しますか

家族・住まい・相続書類を整理するイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した一般定期借地権付きの建物やマンションも売れます。ただし普通借地権(更新あり)と違い、一般定期借地権(借地借家法第22条)は更新がなく、存続期間が満了すれば原則として建物を取り壊し更地で地主へ返します。そのため残存期間が短いほど買主が付きにくく、価格に響きます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、普通借地権との違い・残存期間の効き方・地主の承諾・税務の振り分けを条文から整理します。

結論(先に要点):相続した一般定期借地権付きの建物やマンションも売れます。ただし普通借地権(更新あり)と違い、一般定期借地権(借地借家法第22条)は更新がなく、存続期間が満了すれば原則として建物を取り壊して更地で地主へ返す約束です。そのため残存期間が短いほど買主が付きにくく、価格に響きます。 売るには原則として地主の承諾が要り、相続登記は司法書士、税務は税理士に振ります。

親から相続した家やマンションが「定期借地権付き」だった——土地は自分のものではなく、契約書に「更新がない」「期間満了で返す」と書かれている。売れるのか、それとも満了まで持つしかないのか。本記事は、一般定期借地権付きの戸建て・マンションを相続し、売却か継続保有かを迷っている相続人の方に向けて、普通借地権との違い・残存期間の効き方・承諾・税務の振り分けを条文から整理します。土地(底地)を持つ地主側の話ではなく、建物と借地権を相続した借地人側の視点です。

普通借地権と一般定期借地権は、どう違いますか

更新があるか、期間で終わって更地返還かが、最大の違いです。

借地借家法(平成3年法律第90号)は、建物所有を目的とする借地権について、二つの系統を用意しています。ひとつは更新のある普通借地権(第3条以下。存続期間の満了時に建物があれば更新請求ができ、地主の更新拒絶には正当事由が要る)。もうひとつは更新のない定期借地権等です。

一般に「一般定期借地権」と呼ばれるのは、借地借家法第22条が定めるもの(条文の見出しは「定期借地権」)で、存続期間を50年以上として設定し、①契約の更新がない②建物の築造による存続期間の延長がない③第13条の建物買取請求をしない、という3つの特約を、公正証書等の書面(電磁的記録を含む)で定めたものです。期間が満了すれば、原則として借地人が建物を取り壊し、更地にして地主へ返します。このほか、専ら事業用の建物所有を目的とする事業用定期借地権等(第23条。存続期間10年以上50年未満・公正証書による)や、30年以上経過した時点で建物を地主に譲渡する特約を付す建物譲渡特約付借地権(第24条)もあります。

借地の類型根拠更新期間満了時
普通借地権借地借家法第3条・第5条あり(正当事由がなければ更新)建物があれば継続しやすい
一般定期借地権借地借家法第22条なし原則、建物を取り壊し更地で返還
事業用定期借地権等借地借家法第23条なし用途が事業用に限られる
建物譲渡特約付借地権借地借家法第24条建物を地主へ譲渡する特約

どの類型かは、借地契約書の記載と設定日で決まります。契約書に「定期借地権」「更新がない」「期間満了時に更地返還」と書かれていないかを、売却の検討より先に確認してください。普通借地権を相続した場合の承諾や売却の順序は「相続した借地権付き建物を売るには、地主の承諾がどこまで要るのか」に整理しています。相続不動産全体の進め方は相続した不動産のご相談をご覧ください。

残存期間が短いと、売却価格にどう響きますか

残存期間は、そのまま「あと何年その建物に住めるか・貸せるか」の年数です。短いほど価格は下がります。

一般定期借地権は期間満了で更地返還となるため、買主から見た価値は「残っている年数のあいだ使える価値」に限られます。50年で設定された定期借地マンションを、設定から30年後に相続して売る場合、買主が使えるのは残りおよそ20年です。さらに次の3点が価格を押し下げます。

第一に住宅ローンです。 金融機関は一般に、借入期間を借地の残存期間の範囲に収めることを求めるため、残存期間が短いと買主が長期のローンを組みにくく、買える層が狭まります。第二に満了時の建物取壊し費用です。更地返還が原則なので、解体費の負担を誰がどう見るかが価格交渉に入ります。第三に保証金(預託金)の扱いです。定期借地では契約時に保証金を差し入れていることがあり、その返還債権を売買でどう引き継ぐかを契約に落とす必要があります。

価格に効く要素内容
残存期間短いほど「使える年数」が減り価格が下がる
住宅ローン借入期間が残存期間に制約され、買える層が狭まる
建物取壊し費用満了時の更地返還に伴う解体費の負担
保証金・地代保証金返還債権の承継、地代の水準と改定条項

なお、相続税の計算上の定期借地権等の評価は、残存期間などに応じて財産評価基本通達に沿って行われますが、この課税上の評価額と、実際に市場で売れる価格は一致しません。 本記事では評価額・税額を書かず、相続税評価・譲渡所得は税理士にご確認いただく前提とします。当社は査定額を先に置くのではなく、借地契約書・地代の記録・残存期間を読んでから条件を組み立てます。

地主の承諾や譲渡承諾料は、どう扱いますか

相続で引き継ぐこと自体に承諾は不要ですが、第三者へ売るときは承諾が要ります。

民法(明治29年法律第89号)第896条により、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。借地権もこれに含まれるため、相続そのものに地主の承諾は不要です。ところが売却は別で、借地上の建物を第三者に売れば土地の賃借権も一緒に移り、民法第612条第1項が「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し……ることができない」と定めるため、ここで地主の承諾が必要になります。これは普通借地権でも定期借地権でも同じです。

承諾の見返りに支払う「譲渡承諾料(名義書換料)」に、法律上の一律基準はありません。 借地権価格の一定割合を目安とする言われ方はありますが、その割合を裏付ける公的な一律基準は確認できないため、本記事では金額・割合を断定しません。地主が承諾しないときは、裁判所に承諾に代わる許可を求める借地非訟(借地借家法第19条第1項)という道があり、裁判所が許可の可否と財産上の給付の額を判断します。

場面地主の承諾根拠
相続で引き継ぐ不要民法第896条(包括承継)
第三者に売る(建物+借地権)必要民法第612条第1項
地主が承諾しないとき裁判所の許可を求められる借地借家法第19条第1項(借地非訟)

借地非訟は裁判所の手続であり、許可の可否も金額も裁判所が事案ごとに判断します。当社はこれを判断しません。 地主との条件交渉がこじれて紛争になったときや借地非訟の申立ては、弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。承諾がいる場面といらない場面の切り分けは「相続した家が借地だった──地主の承諾がいる場面・いらない場面」にも整理しています。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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相続登記と税務は、どの専門家に頼みますか

まず建物の相続登記です。 借地権自体は登記されていないことが多いのですが、借地借家法第10条第1項により、借地権者が土地の上に登記された建物を所有していれば、借地権を第三者に対抗できます。対抗力の土台は建物の登記なので、建物の名義が亡くなった方のままだと土台が揺らぎます。定期借地マンションでは、敷地の借地権を区分所有者が準共有しており、専有部分(建物)と敷地利用権をあわせて売ることになります。

相続登記は義務でもあります。不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項は、相続により所有権を取得した者に、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内の申請を求めています(令和6年4月1日施行)。義務化と売却の順序は「相続登記をしないまま実家は売れますか」に書きました。

役割担い手
建物の売買の仲介、借地契約書・残存期間・条件の調査四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)
遺産分割協議書・戸籍の収集など書類の作成四葉行政書士事務所
建物の相続登記・借地権の登記司法書士
相続税・譲渡所得の申告、定期借地権の評価税理士
地主との条件交渉がこじれたときの紛争・借地非訟弁護士

四葉不動産株式会社と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。司法書士・税理士・弁護士へも、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 一般定期借地権付きのマンションは、そもそも売れますか?
A. 売れます。ただし一般定期借地権(借地借家法第22条)は更新がなく、存続期間が満了すれば原則として更地返還になります。買主が使えるのは残存期間のあいだに限られ、住宅ローンの借入期間もその範囲に制約されやすいため、残存期間が短いほど買主が付きにくく価格に響きます。契約書で存続期間と設定日を先に確認してください。

Q. 普通借地権と一般定期借地権は、売りやすさがどう違いますか?
A. 普通借地権は更新があり(借地借家法第3条・第5条)、建物があれば継続しやすいため価値が保たれやすい傾向があります。一般定期借地権(第22条)は更新がなく期間満了で終わるため、残存期間が短いほど価格に響きます。どちらの類型かは借地契約書の記載と設定日で決まります。売却のしやすさの前提が変わるので、まず契約書を確認してください。

Q. 定期借地権付き建物を売るのに、地主の承諾は要りますか?
A. 相続で引き継ぐこと自体には承諾は要りませんが(民法第896条)、第三者に売るときは借地権の譲渡を伴うため、民法第612条第1項により地主の承諾が要ります。これは定期借地権でも同じです。承諾料に法律上の一律基準はなく、地主が承諾しないときは裁判所に承諾に代わる許可を求める借地非訟(借地借家法第19条第1項)という道があります。

Q. 期間満了が近い場合、建物の取壊し費用は誰が負担しますか?
A. 一般定期借地権は原則として期間満了時に借地人が建物を取り壊し更地で返す約束のため、取壊し費用の負担が価格交渉の論点になります。誰がどう負担するかは契約書の定めと売買条件によって変わり、一律の答えはありません。契約書の更地返還条項と保証金の扱いを確認したうえで、個別に条件を組み立てます。具体的な税や取壊し費用の見積りは税理士・解体業者にご確認ください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「借地借家法」(平成3年法律第90号。第3条=存続期間、第5条第1項=更新請求、第10条第1項=借地権の対抗力、第13条第1項=建物買取請求権、第19条第1項=土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可、第22条=定期借地権〈一般定期借地権〉、第23条=事業用定期借地権等、第24条=建物譲渡特約付借地権。公布=1991年10月4日。現行条文は令和4年法律第48号による改正・2026年5月21日施行。2026年9月22日参照
  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第612条第1項=賃借権の譲渡及び転貸の制限、第896条=相続の一般的効力。最終改正は令和8年法律第45号で、2026年6月24日施行分まで反映。2026年9月22日参照
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号。第76条の2第1項=相続等による所有権の移転の登記の申請・3年以内。令和6年4月1日施行。2026年9月22日参照
  • 国土交通省「定期借地権の解説」(一般定期借地権〈存続期間50年以上〉・事業用定期借地権等・建物譲渡特約付借地権の別。2026年9月22日参照

※譲渡承諾料・更新料の水準、借地権と底地の価格の割合については、一次資料で確認できる一律の基準がないため、本記事では金額を書いていません。
※相続税の計算上の定期借地権等の評価は残存期間等に応じて財産評価基本通達に沿って行われますが、課税上の評価額と市場価格は一致しません。具体的な評価額・税額は税理士にご確認ください。本記事では金額を書いていません。
※借地非訟(借地借家法第19条の申立て)は裁判所の手続であり、許可の可否および財産上の給付の額は裁判所が判断します。本記事は個別の事案について可否を判断していません。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断を示すものではありません。建物の相続登記は司法書士、相続税・譲渡所得の申告および定期借地権の評価は税理士、地主との紛争および借地非訟は弁護士が行います。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。相続した不動産について、契約書と登記と期限を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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