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2026.09.16投資・事業用不動産

サウナ・銭湯(公衆浴場)を開くための物件要件は?——公衆浴場法と用途地域

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

サウナ・銭湯・スパの物件で最初に効くのは、①用途地域(公衆浴場は個室付浴場業に係るものを除き幅広い用途地域で建てられ、ここは詰まりにくい)②公衆浴場法が求める構造設備の基準(都道府県の条例で定まり自治体で違う)③用途変更の確認申請(公衆浴場は建築基準法の特殊建築物なので当該用途200㎡超では原則必要)④給排水・換気・レジオネラ対策、の4点です。物件選びの本当の関門は用途地域ではなく構造設備と用途変更・消防にあります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを条文と厚生労働省の要領から順に整理します。

結論(先に要点):サウナ・銭湯・スパの物件で最初に効くのは、①用途地域(公衆浴場は個室付浴場業に係るものを除き、幅広い用途地域で建てられる。ここは詰まりにくい)②公衆浴場法が求める構造設備の基準(都道府県の条例で定まり、自治体で違う)③用途変更の確認申請(公衆浴場は建築基準法の特殊建築物なので、当該用途200㎡超では原則必要)④給排水・換気・レジオネラ対策、の4点です。物件選びの本当の関門は用途地域ではなく、構造設備と用途変更・消防にあります。契約前に条例と検査済証を確かめれば、手戻りは防げます。

「浴室は前のテナントのものが残っているから、すぐ開けます」と言われて借りたのに、営業許可の段になって保健所と特定行政庁の両方から作り直しを求められる。飲食店やクリニックの物件で起きるのと同じ手戻りが、サウナ・銭湯でも起きます。本記事は、東京でサウナ施設・銭湯・スパを新規に開こうとしている事業者と、その物件を貸す方に向けて、賃貸借契約や購入を決める前に確認できることを、公衆浴場法・建築基準法・消防法の条文と厚生労働省の要領から順に整理したものです。営業許可の取り方そのものは行政書士の領域なので別稿にゆずり、本記事は不動産の側から見た物件条件に絞ります。可否の最終確認は特定行政庁・保健所・消防署の窓口で行います。

サウナ・銭湯の物件は、用途地域でどこに出せる?

結論から言うと、用途地域は関門になりにくいのがサウナ・銭湯の特徴です。ここが飲食店や美容室と違います。

建築基準法(昭和25年法律第201号)別表第二は、用途地域ごとに建てられる建築物を定めています。公衆浴場は、最も制限の厳しい第一種低層住居専用地域でも「公衆浴場(個室付浴場業に係るものを除く)」として建てられる建築物に挙げられており、そこから上の用途地域でも建てられます。銭湯が地域の生活に必要な施設と位置づけられてきたためです。

用途地域公衆浴場(個室付浴場業を除く)の扱い
第一種・第二種低層住居専用地域/田園住居地域建てられる(個室付浴場業に係るものは不可)
中高層・住居・準住居地域建てられる
近隣商業・商業・準工業・工業地域建てられる
工業専用地域自治体の運用を要確認

ここで注意が要るのは「個室付浴場業に係る公衆浴場」です。これは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づくもので、用途地域が大きく制限されます。普通のサウナ・銭湯・スーパー銭湯・岩盤浴は個室付浴場業には当たりませんが、企画によっては線引きの確認が要ります。

つまり、物件選びで先に潰しておくべきは用途地域ではなく、次に述べる構造設備・用途変更・消防です。用途地域と容積率が土地の値づけをどう動かすかは日本の土地値はなぜ「容積率」で変わるのかに、消防や自治体の確認が契約より先に要る例は民泊を始められる物件の条件に整理しています。

公衆浴場法が求める構造・設備の要件とは?

公衆浴場を業として経営するには、都道府県知事の許可が要ります。公衆浴場法(昭和23年法律第139号・最終改正 平成23年法律第122号)第2条第1項は、「業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない」と定めます。第1条は公衆浴場を「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義し、サウナ・銭湯・スパはこれに含まれます。

そして、許可の可否は物件の作りにかかります。同法第2条第2項は、「都道府県知事は、公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又はその設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは、(中略)許可を与えないことができる」と定め、同条第3項は、その配置の基準や構造設備の基準を都道府県が条例で定めるとしています。さらに第3条は、換気・採光・照明・保温・清潔その他公衆衛生上必要な措置を求め、その基準もまた条例に委ねています。

つまり、具体的な数値(浴室・脱衣室の広さ、給湯・洗い場、換気の能力など)は、各都道府県〈保健所設置市・特別区ではその市・区〉の条例で決まり、自治体で違います。 「隣の県ではこの広さで通った」がそのまま使えるとは限りません。

物件側で先に確認しておくとよいのは、条例の数値そのものより、その数値を満たせる素地があるかです。

契約前に確認なぜ効くか
脱衣室と浴室を男女別に区画できる間取りか多くの条例が男女別・明確な区画・目隠しを求める
給排水の位置と口径・給湯能力浴槽・シャワー・サウナは大量の給湯と排水が要る
換気設備の有無と増設余地高温多湿の排出は換気で担保する
電気・ガス容量サウナヒーター・ボイラー・循環ろ過で容量が要る
床・壁の防水と防湿常時の湿気に耐える素地。原状回復の範囲とも絡む

給排水・換気・電気の設計は施工業者(設計者)の領域です。当社(不動産会社)は、物件がこれらの条件を満たせるかの下調べと、貸主との条件交渉に伴走します。 設備設計そのものは行いません。

なお、公衆浴場には**一般公衆浴場(いわゆる銭湯)その他の公衆浴場(サウナ・スーパー銭湯・岩盤浴・スパ等)**の区分があります。一般公衆浴場は、既設の浴場との距離を保つ配置基準(距離制限)が条例で置かれることが多く、入浴料金も物価統制令の統制対象です。一方、その他の公衆浴場は距離制限が原則かからず料金も自由です。サウナ・スパの新規開業は通常「その他の公衆浴場」に当たり、配置基準の壁は受けにくいものの、構造設備の基準は条例で別に定められます。どちらに当たるかは企画で変わるため、着手時点で管轄の保健所に確かめてください。

給排水・換気・レジオネラ対策で、物件選びに効く点は?

サウナ・銭湯の物件は、飲食店以上に水と熱と湿気を扱います。ここが物件選びに直結します。

第一に、給湯と排水の能力です。浴槽・シャワー・水風呂は大量の湯水を使い、排水も相応に出ます。前面の給排水管の口径、貯湯・ボイラーの置き場、排水の勾配と接続先を、契約前に施工業者と一緒に見ておくと手戻りが減ります。

第二に、換気です。高温多湿を室外へ逃がす経路(ダクト・給気口・排気口)を取れるか、貸主が外壁・屋上への貫通を認めるかは、飲食店の排気ダクトと同じ論点です。この構造はスケルトン物件で飲食店を開くとき、排気・グリストラップ・防火で物件選びはどこまで決まるかと共通します。

第三に、レジオネラ対策です。循環式の浴槽は、ろ過器や配管でレジオネラ属菌が繁殖しやすく、公衆浴場でのレジオネラ症の集団感染が過去に問題になりました。厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」は、浴槽水の消毒(塩素等)・循環ろ過装置の管理・掛け流しの推奨・貯湯槽の温度管理などを示しています(2026年9月16日参照)。物件段階では、循環設備を置ける機械室のスペースと、配管を短く単純に組める素地があるかが、後々の衛生管理のしやすさを左右します。

物件で見る点効いてくる場面
給湯・ボイラーの設置場所と容量浴槽・シャワー・サウナの同時使用に耐えるか
排水の口径・勾配・接続先大量排水と油分・毛髪の処理
換気・排気の経路と貫通の可否高温多湿の排出。貸主の許可が要る
機械室(循環ろ過・貯湯)のスペースレジオネラ対策と維持管理のしやすさ

これらの設計・施工は施工業者が、衛生管理の運用は開設者が担います。当社は物件がこの素地を持つかの下調べに伴走します。

中古物件の用途変更・検査済証はどう確認する?

ここが、サウナ・銭湯に特有の関門です。公衆浴場は建築基準法の特殊建築物(別表第一(い)欄(4)項に「公衆浴場」が挙がる)に当たります。

このため、事務所や店舗だった中古物件をサウナ・銭湯に変えるとき、その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えると、用途変更の確認申請が必要になるのが原則です。建築基準法第87条第1項は、用途を変更して同法第6条第1項第1号の特殊建築物(別表第一(い)欄の用途で200㎡超)とする場合に、確認の手続を準用しています。美容室やクリニックが用途変更の確認申請にかかりにくいのと対照的で、ここを見落とすと開業が止まります。

あわせて、検査済証の有無を確認します。検査済証がない中古建物は、そのままでは用途変更の確認申請や金融機関の融資で支障が出ることがあります。検査済証がなくても、法適合状況調査で建築時の適法性を確かめられる場合があり、既存不適格か違反建築かの見極めが要ります。この論点は検査済証のない中古物件を福祉施設に転用できるかに整理しています。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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中古物件で確認どこで・誰がなぜ効くか
当該用途部分が200㎡を超えるか図面・特定行政庁超えれば用途変更の確認申請(第87条)
検査済証の有無検査済証・台帳記載事項証明ない場合の法適合調査の要否
既存不適格か違反建築か建築士・特定行政庁是正の可否と費用に直結
消防用設備の現況消防署・図面(9)項イ・ロで求められる設備が変わる

そして消防です。消防法施行令別表第一は、サウナ(蒸気浴場・熱気浴場その他これらに類する公衆浴場)を(9)項イ、それ以外の公衆浴場を(9)項ロに区分します。(9)項イは火気・高温を扱うため、消防用設備や避難の基準が(9)項ロより厳しくなり得ます。用途変更・建築確認は建築士(指定確認検査機関)、消防同意・消防用設備は消防署が扱います。用途変更の要否・検査済証・消防設備は、契約前に特定行政庁と消防署の窓口で確認できます。 事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。介護事業所で同じ手戻りが起きる理由は介護事業所の物件が見つからない本当の理由に、契約書のどこを読むかは賃貸借契約書、どこを読めばいいかにまとめています。

許可申請・建築確認・消防はそれぞれ誰に依頼する?

サウナ・銭湯の開業は、関わる専門家が多い分野です。はじめに交通整理をしておくと迷いません。

やること担い手
物件の調査・条件確認・媒介・売買/賃貸借契約四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)
公衆浴場の営業許可申請・保健所提出書類の作成行政書士
用途変更・建築確認の設計・申請建築士(指定確認検査機関)
消防同意・消防用設備・防火対象物の届出消防署・消防設備士
給排水・換気・循環ろ過の設備設計と施工施工業者

物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。公衆浴場の営業許可申請など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。この2つ(不動産会社・行政書士事務所)はそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。用途変更・建築確認の設計は建築士、消防用設備は消防設備士、登記は司法書士、税務は税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。行政の窓口・様式・条例の数値・受付の運用は変わります。着手時点で管轄の保健所・特定行政庁・消防署のページを直接ご確認ください。

よくある質問

Q. サウナ・スーパー銭湯は住宅街(第一種低層住居専用地域)に開けますか?
A. 建築基準法別表第二は、第一種低層住居専用地域でも「公衆浴場(個室付浴場業に係るものを除く)」を建てられる建築物に挙げています。用途地域だけを見れば開ける余地があります。ただし、公衆浴場法の構造設備基準(都道府県の条例)、用途変更の確認申請、消防、近隣への配慮は別に効きます。用途地域上の可否は物件ごとに異なるため、特定行政庁の窓口で確認してください。

Q. 前も浴場だった居抜き物件なら、そのまま営業許可が通りますか?
A. 通るとは限りません。公衆浴場法の許可は物件と経営者ごとに受けるもので、前の店の許可は引き継がれません。条例や運用が改正されていることもあります。残置設備(浴槽・循環ろ過・ボイラー)の状態と現行の条例基準への適合、レジオネラ対策の作り、消防用設備の現況を、引渡し前に点検し、保健所・消防署に確認してください。

Q. 事務所ビルの一室をサウナに変える場合、用途変更の確認申請は要りますか?
A. 公衆浴場は建築基準法の特殊建築物なので、その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えるときは、用途変更の確認申請が原則必要です(建築基準法第87条第1項)。200㎡以下でも、用途地域の制限や採光・換気・防火などの実体規定はかかります。要否は床面積・構造・区域で変わるため、契約前に特定行政庁で確認してください。

Q. サウナは消防法上、普通の銭湯と扱いが違いますか?
A. 違います。消防法施行令別表第一は、蒸気浴場・熱気浴場その他これらに類する公衆浴場(サウナ)を(9)項イ、それ以外の公衆浴場を(9)項ロに区分しています。(9)項イは火気・高温を扱うため、消防用設備や避難の基準が(9)項ロより厳しくなり得ます。必要な設備は建物の規模・階数でも変わるので、消防署に確認してください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「公衆浴場法」(昭和23年法律第139号。第1条=公衆浴場の定義(温湯・潮湯・温泉その他を使用して公衆を入浴させる施設)、第2条第1項=業として経営するには都道府県知事の許可、第2項=設置場所・構造設備が公衆衛生上不適当・配置の適正を欠くときは許可を与えないことができる、第3項=配置の基準・構造設備の基準は都道府県の条例、第3条=換気・採光・照明・保温・清潔その他公衆衛生上必要な措置とその基準の条例委任。最終改正 平成23年法律第122号。2026年9月16日参照
  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。別表第一(い)欄(4)項=公衆浴場は特殊建築物、別表第二=用途地域内の建築物(公衆浴場は個室付浴場業に係るものを除き第一種低層住居専用地域から建築可能)、第48条=用途地域の制限、第6条第1項第1号=特殊建築物で200㎡超の確認、第87条第1項=用途変更に伴う確認申請の準用。2026年9月16日参照
  • e-Gov法令検索「消防法施行令」(昭和36年政令第37号。別表第一(9)項イ=蒸気浴場・熱気浴場その他これらに類する公衆浴場、(9)項ロ=イ以外の公衆浴場。防火対象物の区分に応じて消防用設備等の設置基準が変わる。2026年9月16日参照
  • 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(浴槽水の消毒・循環ろ過装置の管理・貯湯槽の温度管理などレジオネラ症対策を含む衛生管理の考え方。具体的な構造設備・衛生措置の数値は各都道府県・保健所設置市・特別区の条例による。2026年9月16日参照

※構造設備・衛生措置の具体的な数値(浴室・脱衣室の広さ、給湯・洗い場・換気の能力など)は、各都道府県・保健所設置市・特別区の条例で定められ、自治体ごとに異なります。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の保健所・特定行政庁・消防署の窓口で確認してください。
※用途地域上の可否・用途変更の確認申請の要否は、物件の床面積・構造・区域の指定によって変わります。最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
※「個室付浴場業に係る公衆浴場」に当たるかは企画によって変わり、当たる場合は用途地域の制限が大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や営業許可の受理を判断・保証するものではありません。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、営業許可申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。用途変更・建築確認の設計は建築士、消防用設備は消防設備士が担います。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と許認可(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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