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相続

親族にタダで貸していた「使用貸借」の土地を相続した——売るには何から?

相続した実家を前に立つ二人の後ろ姿を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

親が親族・知人にタダで貸していた土地を相続したら、まず「使用貸借(無償)」と「賃貸借(有償)」の違いを押さえます。使用貸借には借地借家法の保護が及ばず、借主の死亡で原則終了します(民法第597条第3項)が、貸主(親)が亡くなっても終了せず相続人が貸主の地位を承継します(第896条)。借主が使い続けたまま売る場合の説明・価格、明け渡しは弁護士の領域であること、相続登記を先に済ませる理由まで、東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が民法の条文から整理します。

結論(先に要点):親が親族・知人にタダで貸していた土地を相続したとき、まず押さえるのは「使用貸借(無償)」と「賃貸借(有償)」の違いです。使用貸借には借地借家法の保護が及ばず、借主の死亡で原則終了します(民法第597条第3項)。一方、貸主(親)が亡くなっても使用貸借は終わらず、相続人が貸主の地位を承継します(民法第896条)。売買の可否・査定・買主探しは当社(四葉不動産株式会社)が情報提供として担い、明け渡しの交渉・訴訟は弁護士、相続登記は司法書士、譲渡所得・評価は税理士へ振ります。これらは独立した事業体で、それぞれ直接ご契約いただきます。

親が親族や知人にタダで使わせていた土地を相続し、借主が今も使っている——このとき「売れるのか」「明け渡してもらえるのか」で迷うのは、無償の使用貸借が有償の賃貸借とは法的な性質からして違うからです。本記事は、使用貸借の土地を相続した相続人に向けて、売るか明け渡しかを考える前に何を確認し誰に相談すればよいかを、民法の条文から整理したものです。売却の進め方・査定は当社が情報提供として担い、法的判断は有資格者が行います。

使用貸借と賃貸借は、相続後の売却でどこが決定的に違うのか?

いちばんの違いは、借主が法律でどれだけ守られるかです。賃料をとって貸す賃貸借(借地)は借地借家法の保護が厚く、貸主の都合だけでは終わらせにくいのに対し、無償で貸す使用貸借は借地借家法の適用外で、貸主側の都合で終了しやすい関係です。

論点使用貸借(無償)賃貸借(有償・借地)
対価無償(固定資産税相当額の負担程度なら使用貸借とされることが多い)地代あり
根拠民法第593条〜第600条民法+借地借家法
借地借家法の保護及ばない及ぶ(正当事由・法定更新など)
借主の死亡原則終了(民法第597条第3項)相続人に承継される
対抗力第三者に対抗しにくい建物登記等で対抗できる

「ずっとタダで貸してきた」ことは、賃貸借のような強い保護を生みません。 対価のある借地権(借地借家法の保護あり)の底地を売る話は相続した底地を売るにはや相続した家が借地だったときに整理しています。無償の使用貸借はこれらと法的性質が異なるため、同じ「貸していた土地」でも出口が変わります。相続不動産全般は相続と不動産をご覧ください。

貸主(親)が亡くなると使用貸借はどうなるのか、借主が死ぬとどうなるのか?

使用貸借は貸主と借主の個人的な信頼関係にもとづくものですが、当事者のどちらが亡くなるかで扱いが逆になります。

  • 貸主(親)の死亡:使用貸借は終了しません。貸主の地位は相続の一般承継(民法第896条)によって相続人に承継され、相続人が新たな貸主になります。つまり相続人は、親と借主の間の使用貸借を引き継いだ状態で土地を取得します。
  • 借主の死亡:使用貸借は原則として終了します(民法第597条第3項)。借主の地位は相続人に承継されないのが原則です。

ただし、民法第597条第3項は任意規定で、当事者が「借主が死亡しても存続させる」特約をしていた場合や、建物所有を目的とするなど契約の趣旨から存続が認められる場合には、例外的に扱いが変わることがあります。また、借主の死亡を理由とする明け渡し請求が、居住の利益との関係で権利濫用とされた裁判例もあります。どの終了原因が当てはまるかは契約の内容と事情によって判断が分かれるため、個別の可否は弁護士に確認します。

借主が住み続けたまま土地を売る場合、買主にどう説明し価格にどう反映されるのか?

借主が使い続けている状態のまま土地を売ること自体はできます。ただし、買主は「使用貸借の借主が使っている土地」を買うことになるため、そのままでは自由に使えず、価格や買主層に影響します。

論点内容
説明使用貸借の存在・借主・目的・終了原因の見込みを、重要事項説明として買主へ正確に伝える
対抗力使用貸借は第三者に対抗しにくいが、買主が明け渡しを実現できるかは事情による
価格借主が使っている分、更地として自由に使える土地より価格は下がりやすい
買主層明け渡しの手間・不確実性を引き受けられる買主に限られやすい

「使っている人がいる土地」であることを隠して売ることはできません。 使用貸借の状況を正確に説明したうえで、明け渡してから売るか、借主が使う前提のまま売るかを比較します。査定と売り方の比較は当社がご案内し、明け渡しの見込みが立つかどうかの法的評価は弁護士が担います。

明け渡しを求めるとき、いきなり不動産会社が交渉してよいのか(誰に頼むのか)?

いけません。借主に明け渡しを求める交渉は、相手と利害が対立する法律事務です。報酬を得て他人の法律事務を代理・交渉できるのは弁護士で、不動産会社や行政書士が当事者に代わって明け渡しの交渉・請求を行うことはできません。

段階内容担い手
使用貸借の性質・終了原因の確認契約内容・事情の法的評価弁護士
明け渡しの交渉・内容証明・訴訟借主との対立を含む法律事務弁護士
明け渡し後(または借主が使う前提)の売却査定・買主探し・媒介・売買契約宅地建物取引業者(当社)

「話し合いがまとまらず争いになる」領域は、はじめから弁護士の領域です。 当社は、明け渡しの見込みが立った場合や、借主が使う前提での売却に伴走します。明け渡しの交渉・訴訟そのものは弁護士へ直接ご依頼ください。

相続登記を先に済ませないと売れないのはなぜか?

売買をするには、その土地が誰の名義かが登記で確定していなければなりません。親名義のままでは買主への所有権移転登記ができないため、まず相続登記(親から相続人への名義変更)を済ませる必要があります。

不動産登記法第76条の2は、相続により不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内の相続登記の申請を義務づけています(令和6年4月1日施行)。正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。

  • 名義が親のままでは、買主への移転登記ができず売買が完了しない
  • 遺産分割協議がまとまっていれば、その内容にもとづき相続登記をする
  • 相続登記・所有権移転登記は司法書士の業務

相続登記の義務化は、売る・売らないにかかわらず適用されます。使用貸借の土地を売ると決めたら、まず相続登記を済ませておくのが前提になります。相続登記は司法書士、遺産分割協議書の作成は行政書士が担います。

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

売却・登記・税務・交渉は、それぞれ誰に頼むのが安全か(分離受任)?

使用貸借の土地を相続して処分するときは、複数の専門家が関わります。役割を分けると次のとおりです。

やること担い手
売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社)
遺産分割協議書の作成行政書士(四葉行政書士事務所)
借主との明け渡し交渉・訴訟弁護士
相続登記・所有権移転登記司法書士
譲渡所得税・取得費・評価の計算税理士

譲渡所得(売った金額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算)は、取得費が分からないときや実際の取得費が売った金額の5%を下回るときに、売った金額の5%を概算取得費とすることができます(国税庁タックスアンサー No.3258)。相続で取得した土地の取得費の考え方は No.3270 に整理されています。具体的な税額の計算・申告は税理士が担います。

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。明け渡しの交渉・訴訟は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。

誰に相談すればよいですか?

使用貸借の土地の売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。遺産分割協議書など官公署・私人間に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。借主との明け渡し交渉・訴訟は弁護士が、相続登記・所有権移転登記は司法書士が、譲渡所得税・取得費・評価の計算は税理士が扱います。

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料のやりとりをしません。明け渡しの争いは弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、雇用・社会保険は社会保険労務士(四葉社会保険労務士事務所)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 親が親戚にタダで貸していた土地を相続しました。親が亡くなったので使用貸借は終わりましたか?
A. 終わりません。貸主(親)が亡くなっても使用貸借は終了せず、貸主の地位は相続の一般承継(民法第896条)によって相続人に承継されます。あなたは親と借主の間の使用貸借を引き継いだ状態で土地を取得したことになります。終了させられるかどうかは、契約の目的・期間・事情によって判断が分かれるため、弁護士にご確認ください。

Q. 使用貸借でも、賃貸借の借地権のように強く守られますか?
A. いいえ。使用貸借は無償で貸すもので、借地借家法の保護(正当事由・法定更新など)は及びません。有償の賃貸借(借地権)とは法的な性質が違い、貸主側の都合で終了しやすい関係です。ただし、居住の利益との関係で明け渡し請求が権利濫用とされた裁判例もあり、個別の当否は事情によります。

Q. 借主が使い続けているまま、土地を売ることはできますか?
A. 売ること自体はできます。ただし買主は「使用貸借の借主が使っている土地」を買うことになるため、使用貸借の存在・借主・目的・終了原因の見込みを正確に説明する必要があり、更地より価格は下がりやすく、買主層も限られます。明け渡してから売るか、使う前提のまま売るかの比較は査定とあわせてご案内します。

Q. 借主に「出て行ってほしい」と伝えるのは、不動産会社に頼めますか?
A. 明け渡しの交渉は相手と利害が対立する法律事務のため、不動産会社や行政書士が当事者に代わって交渉・請求することはできません。報酬を得てこれを代理できるのは弁護士です。明け渡しの見込みが立った後の売却や、借主が使う前提での売却には当社が伴走します。交渉・訴訟そのものは弁護士へ直接ご依頼ください。

この記事の出典(一次情報)

※使用貸借の終了原因(借主の死亡・目的の達成・相当期間の経過・解除)の当てはめ、明け渡しの可否、権利濫用の成否は、契約の内容と個別の事情によって判断が分かれます。本記事は個別の事案について判断していません。争いのある事案・明け渡しの交渉は弁護士へご相談ください。
※相続登記・所有権移転登記は司法書士へ、譲渡所得税・取得費・評価の具体的な計算と申告は税理士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の売却の可否や税額を判断・保証するものではありません。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・登記・税務・紛争の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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