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2026.09.17相続

相続した賃貸併用住宅は売る・貸す・住むのどれで考える?

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した賃貸併用住宅(自宅と賃貸部分が一体の建物)は、売る・貸す・住むのどれもできます。分かれ目は入居者の有無と税の特例の効き方です。入居者がいるまま売るオーナーチェンジでは賃貸人の地位が買主に移り(民法第605条の2)、入居者は借地借家法で守られます。居住用3000万円特別控除(租税特別措置法第35条)は居住用部分のみ、小規模宅地等の特例(第69条の4)は居住用と賃貸で枠が別。譲渡所得税・特例は税理士、相続登記は司法書士、入居者との紛争は弁護士に振ります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が条文と国税庁の資料から整理します。

結論(先に要点):相続した賃貸併用住宅(自宅と賃貸部分が一体の建物)は、売る・貸す・住むのどれもできます。分かれ目は入居者の有無と、税の特例の効き方です。賃貸部分に入居者がいるまま売る「オーナーチェンジ」では、賃貸人の地位が買主に移り(民法第605条の2)、入居者は借地借家法で守られるため簡単には退去させられません。売るときの居住用3000万円特別控除(租税特別措置法第35条)は居住用部分に対応する部分にしか使えず、小規模宅地等の特例(同第69条の4)は居住用部分と賃貸部分で枠が別です。譲渡所得税・特例の適用は税理士、相続登記は司法書士、入居者との紛争は弁護士に振ります。

自宅の一部を賃貸にした「賃貸併用住宅」を、入居者がいる状態で相続し、出口に迷う相続人に向けて、物件としての判断材料を、民法・借地借家法・租税特別措置法の条文と国税庁の資料から整理しました。併用住宅は、自宅単体とも、賃貸アパート単体とも事情が違います。価格や税額の最終確認は、税理士と当社の査定で行います。

相続した賃貸併用住宅は売る・貸す・住むのどれで考える?

まず、3つのどれもできることを押さえます。そのうえで、入居者の有無・築年・自分が住むかで向き不向きが変わります。

賃貸併用住宅は、1棟の中に「自宅として使う部分」と「他人に貸す部分」が同居します。相続すると、賃貸部分の貸主の地位も、被相続人の財産として包括的に承継されます(民法第896条)。つまり入居者との契約は自動的に引き継がれ、家賃の入金は続きます。判断の入り口は、賃貸を続けて収益を得るか、自宅部分に住むか、売って現金化するかです。

選択肢向いている場面主な留意点
売る遠方・管理が難しい・現金で分けたい入居者がいると買主層・価格が変わる/税の特例の按分
貸す(保有)家賃収入を得たい・立地が良い修繕・空室・管理の手間/貸主の義務
住む自宅部分に住み続けたい賃貸部分の管理は続く/将来の出口

現物で分けにくい1棟の建物を複数の相続人で相続する場合、売って現金で分ける(換価分割)を選ぶことも多く、その流れは相続した不動産を換価分割で売る流れは?に整理しています。共有のまま売るときの全員同意は相続した共有の不動産を売ると同じ構造です。

入居者がいる状態(オーナーチェンジ)と空室にしてからでは何が変わる?

入居者がいるまま売る「オーナーチェンジ」と、空室にしてから売るのとでは、買主層・価格・スピードが変わります。

オーナーチェンジでは、賃貸借契約・敷金・入居者をそのまま買主に引き継ぎます。賃貸人たる地位は、建物の所有権とともに買主へ移ります(民法第605条の2)。入居者に承諾を得る必要はありませんが、家賃の振込先が変わるため通知します。重要なのは、入居者を退去させて空室にするのは簡単ではない点です。建物賃貸借は借地借家法で守られ、貸主からの更新拒絶や解約には正当事由が要り(借地借家法第26条〜第28条)、立退料が必要になることもあります。

オーナーチェンジ(入居中のまま売る)空室にしてから売る
買主層投資家(収益物件として)実需(自分で住む)+投資家
価格の見方家賃利回りが効く自宅としての相場が効く
退去不要(契約を引き継ぐ)正当事由・立退料が要ることがある
スピード空室化を待たない分、早いことが多い退去交渉で時間がかかりうる

賃貸中のまま売る実務は海外に住む相続人が、賃貸中のマンションを売るにはどう進めますかにも整理しており、併用住宅でも賃貸部分の考え方は共通します。入居者との交渉がこじれ、明渡しや立退料が争いになれば、それは弁護士の領域です。

売るときの譲渡所得税と居住用3000万円控除はどこまで使える?

売って利益(譲渡所得)が出れば、譲渡所得税がかかります。居住用の3000万円特別控除は、併用住宅では「居住用部分に対応する部分」にしか使えないのが原則です。

譲渡所得は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)」で計算し、取得費は建物の減価償却を踏まえます(国税庁タックスアンサーNo.3252)。税率は所有期間で変わり、譲渡した年の1月1日で所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)です(No.3208)。相続で取得した不動産は、被相続人の取得時期・取得費を引き継ぎます。

居住用財産を売ったときの3000万円特別控除は租税特別措置法第35条にあります。併用住宅では、控除は居住用部分に対応する部分にのみ適用され、賃貸部分には及びません。 ただし、居住用部分がおおむね9割以上を占めるときは、その全体を居住用として扱える取扱いが国税庁で示されています。按分の考え方や適用の可否は事案で変わります。

項目内容(根拠)
3000万円特別控除居住用部分に対応する部分のみ(租税特別措置法第35条)。居住用がおおむね9割以上なら全体を居住用扱いできる取扱い
長期譲渡(5年超)所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(No.3208)
取得費相続で被相続人の取得費・時期を引き継ぐ/建物は減価償却(No.3252)

居住用と賃貸用の按分、特例の適用可否、税額の計算は税理士の領域です。当社は物件の居住・賃貸の面積や利用状況を整理し、税理士の判断につなぎます。相続税評価額と実際の売買価格は一致しません。

区分登記の有無で小規模宅地の特例はどう変わる?

相続税の側では、小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)が敷地の評価を下げます。併用住宅では、居住用部分と賃貸部分で使える枠が別です。

居住用部分の敷地は特定居住用宅地等として330㎡まで80%減、賃貸部分の敷地は貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減の対象になり得ます(それぞれ要件と限度面積の調整があります)。ここで効いてくるのが建物の登記の仕方です。1棟の建物を居住用・賃貸用で区分登記しているか、区分せず1個の建物として登記しているかで、誰の居住・事業とみるか、敷地のどの範囲に特例が及ぶかの判定が変わり得ます。とくに二世帯居住や生計を一にするかどうかが絡む場面で、区分登記の有無が結論を分けることがあります。

部分特例の区分(租税特別措置法第69条の4)限度・減額
居住用部分の敷地特定居住用宅地等330㎡まで80%減(要件あり)
賃貸部分の敷地貸付事業用宅地等200㎡まで50%減(要件あり・限度面積の調整)

区分登記は建物の表題部の問題で、登記の手続そのものは司法書士・土地家屋調査士の領域です。小規模宅地等の特例の適用可否・按分・限度面積の調整は税理士が判断します。 相続登記の義務化(不動産登記法第76条の2・令和6年〈2024年〉4月1日施行)で、売る前提でも名義を整える必要があり、その順序は相続登記をしないまま実家は売れますかに整理しています。

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物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

住み続けながら賃貸部分だけ整理する選択肢はある?

あります。自宅部分に住み続けながら、賃貸部分だけを見直す道です。

たとえば、賃貸部分の入居者が退去したタイミングで賃貸をやめて自宅として使う、賃貸を続けて家賃収入を得る、建物全体を売って住み替える、といった組み合わせが考えられます。ただし、入居者がいる限りは貸主としての義務(修繕など)が続き、借地借家法の保護がある以上、貸主の都合だけで賃貸をやめることはできません。将来の建て替えや売却まで見据えると、更地にして売るか古家付きで売るかの比較も参考になります(相続した空き家は、解体して更地で売るか古家付き土地で売るか)。

役割の分担は次のとおりです。物件の調査・査定・媒介と売買契約(オーナーチェンジ売却を含む)は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。遺産分割協議書など権利義務に関する書類・官公署に提出する書類の作成は四葉行政書士事務所が承ります。この2つはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。譲渡所得税・3000万円控除・小規模宅地等の特例は税理士、相続登記・区分登記は司法書士(表題部は土地家屋調査士)、入居者との明渡し・立退料の紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相続した不動産の全体像は相続した不動産のご相談にまとめています。相談は無料です。

よくある質問

Q. 賃貸部分に入居者がいます。相続してすぐ、空室にして売れますか?
A. すぐには難しいのが原則です。建物賃貸借は借地借家法で守られ、貸主からの更新拒絶や解約には正当事由が要り(第26条〜第28条)、立退料が必要になることもあります。入居者がいるまま「オーナーチェンジ」で売れば、契約と敷金・入居者を買主に引き継げます(民法第605条の2)。空室化を待つか入居中で売るかは、価格・買主層・スピードで比べて決めます。明渡しの交渉が争いになれば弁護士の領域です。

Q. 居住用3000万円控除は、賃貸併用住宅でも使えますか?
A. 使えますが、原則として居住用部分に対応する部分に限られます(租税特別措置法第35条)。賃貸部分には及びません。ただし居住用部分がおおむね9割以上を占めるときは、全体を居住用として扱える取扱いが国税庁で示されています。按分や適用の可否は事案で変わるため、税理士にご確認ください。

Q. 相続税の小規模宅地等の特例は、自宅部分と賃貸部分の両方に使えますか?
A. 居住用部分の敷地は特定居住用宅地等(330㎡・80%減)、賃貸部分の敷地は貸付事業用宅地等(200㎡・50%減)の対象になり得ます(租税特別措置法第69条の4)。ただし要件や限度面積の調整があり、建物を区分登記しているかどうかで判定が変わる場面もあります。適用の可否と計算は税理士が判断します。

Q. 売るとき、相続登記は先に済ませないといけませんか?
A. はい。売主が登記名義人であることが売買の前提になるため、先に相続登記を済ませます。相続登記は令和6年(2024年)4月1日から義務化され(不動産登記法第76条の2)、取得を知った日から3年以内の申請が求められます。登記手続は司法書士の領域です。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和32年法律第26号。第35条=居住用財産の譲渡所得の3000万円特別控除、第69条の4=小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例。2026年9月17日参照
  • 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除。店舗併用住宅など居住用以外の部分がある場合の取扱い。2026年9月17日参照
  • 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(譲渡した年の1月1日で所有期間5年超の長期譲渡所得。所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)。2026年9月17日参照
  • 国税庁「No.3252 取得費となるもの」(取得費に含まれるもの・建物の減価償却の考え方。相続で取得した資産は被相続人の取得費・取得時期を引き継ぐ。2026年9月17日参照
  • e-Gov法令検索「借地借家法」(平成3年法律第90号。第26条=建物賃貸借の更新、第27条=解約による終了、第28条=更新拒絶等の正当事由。最終改正は令和5年法律第53号。2026年9月17日参照
  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第605条の2=不動産の賃貸人たる地位の移転、第896条=相続の一般的効力(包括承継)。2026年9月17日参照

※相続税評価額と実際の売買価格は一致しません。譲渡所得税・3000万円控除・小規模宅地等の特例の適用と計算、按分は税理士が行います。本記事は個別の事案について税額や可否を判断していません。
※賃貸部分の明渡し・立退料の可否や金額は個別の事情によって変わり、争いは裁判所の手続によることがあります。この段階は弁護士の領域です。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断を示すものではありません。相続登記・区分登記は司法書士(建物の表題部は土地家屋調査士)、税務は税理士、入居者との紛争は弁護士が行います。
※物件の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。相続した賃貸併用住宅について、入居者の契約・登記・税の特例を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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